近年話題になっているIoT、文部化科学省の「日本再興戦略2015 改訂」にも、「IoT・ビッグデータ・人工知能等による産業構造・就業構造の変革」として国の戦略にIoTが掲げられています。
となると海外も事情も気になるところ。基礎情報と事例10選を紹介します。
1.海外のIoT事情とは【基礎情報と国別の情報】
企業の数を見てもIoTにお金をかけている額を見てもIoTの最前線を行くのはアメリカです。
「平成28年版 情報通信白書 第1部 第3節(いか、情報通信白書)」によると、IoT自ら取り組むスタンスの企業が多い国(アメリカ・ドイツ・中国)とそうではない国(日本、イギリス、韓国)に二分されているようです(参考:国際的なIoTの進展状況)。
各国の取り組み(参考:情報通信白書)
アメリカ
ホワイトハウス直下のプロジェクト「Smart America Challenge」(2013年より開始)にて、CPSが新たな事業の創出、経済発展への寄与につながることを目的としています。
CPSは(Cyber-Physical System)の略で実世界にあるデータを集めてクラウド(などの空間)上で処理・分析をして、その結果を実世界に還元すること。
IoTとほぼ同じ意味で使われています。
具体的には、アメリカではコンソーシアム「Industrial Internet Consortium(IIC)」が立ち上げられています。
ドイツ
ドイツでは「第4次産業革命」が目指されています。
これは製造業のIoT化によって、注文から出荷までの工程をつなぎ、さらにリアルタイムで管理することをいいます。
「第4次産業革命」は官民連携プロジェクト「インダストリー4.0戦略」で唱えられており、ドイツの主要企業も参画しています。
国際的なIoTの進展状況
中国
中国におけるIoT(やM2M)は「物聯網」という風に呼ばれています。主に、地方自治体が民間と協力していることが特徴。
研究開発拠点の整備や企業の誘致が進められています。
どの組も国家レベルで取り組んでおり、IoTへの注目度が高まっていることがわかります。
2.海外のIoT企業をピックアップしてみた【10選まとめ】
海外の実例をピックアップしてみました。
1.Senic
「Nuimo」という、さまざまな電子機器と接続できるセンサーを開発している企業です。Tobias、Felix 、Philipというテクノロジーを愛する3人が 2013年に創業しました。
「Nuimo(2016年ドイツデザインアワード受賞)」という製品は、コンピュータやスピーカなどの電子機器と接続することで、Nuimo本体を触ってそれらを操作することができます。例えば、画面のスクロールや音量調整などです。
Senic - Home
2.Hexoskin
IoT を駆使したスポーツウェアを製造している会社です。
HEXOSKINというウェアは心拍、呼吸、肺活量や睡眠のデータまで採取することができるウェアラブル(着られる)テクノロジーです。
採取したデータはスマホで確認することができるので、管理も簡単。
Hexoskin Smart Shirts - Cardiac, Respiratory, Sleep & Activity Metrics
3.Vibrado
Vibradoはフィジカルスキル(体の動かし方というとわかりやすいでしょうか)の習得をサポートする製品を開発しています。
これまではビデオカメラで撮影して自分の体の動きを確認していましたが、製品を着ることでより精密に体の動きが把握できるようになります。
Vibrado
4.CITYZEN SCIENCES
CITYZEN SCIENCESは「テクノロジー×繊維」がテーマの企業。
繊維にセンサーを編み込むことで違和感のないウェアラブルデバイスを開発しています。
男性であればTシャツ、女性はフィットネス用ブラ、またセンサーの編み込まれた枕をつくることもできる技術です。
Cityzen Sciences - votre spécialiste en textiles connectés
5.Nomiku
NomikuはWi-fi接続が可能な調理機器「Wi-fi Nomiku」を開発しています。
温度設定をすることで、お肉を蒸したり、ワインを冷やしたりできる万能調理器具です。安全にも配慮されているので、スマートフォン上での遠隔操作も可能です。
Products | Nomiku
6.SectorQube
SectorQubeは「MAID OVEN」というオーブン調理機器を開発しています。
食事の時間・温度を設定することで、食べたい時間に最適な温度で料理を提供してくれます。またインターネット上にあるレシピを記録することで、どんどんと可能な料理の幅が広がっていきます。
SectorQube
7.Cinder
箱型のグリルのような調理機器「℃inder」を開発している企業です。
「お肉、野菜などを、口の中でとろける最適な状態で提供できて、たった750$でミシュランの星付き料理が食べられるグリルです」と紹介されています。
Cinder Grill: Cook Food Perfectly
8.Navdy
Navdyは「電話と車をつなぐ」デバイスです。
運転席の目の前に小さなディスプレイが表示され、マップ情報を表示したり電話やメールの着信を知らせたりします。Navdyにはセンサーがついており、通話やメール確認はジェスチャーで行えます。
マップの検索はなんとgoogleと連携しています。
The Best Head-Up Display For Your Car | Navdy
9.LIVEMAP
ロシア発の企業です。バイク用のヘルメットとテクノロジーを融合させた「LIVEMAP HELMET」を展開しています。
LIVEMAP HELMETにはヘッドフォン、マイクが内蔵され音声で制御する仕組みになっています。風よけ部分がディスプレイがとなり、目の前に映し出された交通情報を確認しながらの走行が可能です。
LiveMap: Motorcycle smart helmet with Augmented Reality navigation
10.vanhawks
vanhawksはカーボン製の自転車に、GPS、ライト(暗くなったら自動点灯)スピードセンサ、搭載させています。
ハンドル部分に埋め込まれたセンサーは走行距離などを計測することもでき、さらにWi-fiに接続することによりスマホで走行データも管理できる優れものです。
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おまけ:トイレIoT
日本では考えられない?? 海外のおトイレ問題を解決するIoT秘策とは?
トイレに IoTと聞くと蓋の開閉や水洗が浮かぶかもしれませんが、海外は一味違います。
海外では「紙」が盗まれることがあるんです。特に予備のトイレットペーパーなんかはすぐに盗まれます。
中国では「顔認識技術」で解決しましたが(用を足す前に顔を認識することで紙が出てくる。しかし9分以内に同じ顔の人が来たらでない)、気持ちのよいものではありません。
そんななかhackster社(サンフランシスコ)は「ロールの量」をリアルタイム監視できるガジェットを開発しました。
3.IoTは始まったばかり。今後の展望を考える。
アメリカ、中国、ドイツのIoTへの取り組みや、海外のIoT製品事例をみてきました。想像よりもたくさんの分野に応用されていたのではないでしょうか。
みずほ情報総研『IoT(Internet of Things)の現状と展望』には、次のように書かれています。
モノがインターネットに接続され、製品の付加価値や生産性向上等が実現するという言葉だけで足らない、大きな変化を生活・暮らし、企業活動にもたらすことが見込まれる。
IoTが各分野における情報通信技術の活用の高度化というだけでなく、近代社会を支える自動車の概念の変化や新たなサービスの勃興、人の生活・行動の質の向上、ものづくりのバリューチェーンの変革、新たなものづくりスタイルの創造等を生み出す動きが活発化している。
いま現在は「暮らしが便利になる」といった程度のイメージが強いと思いますが、「モノがインターネットに接続される」ことは、私たちの想像以上に世界の暮らしを一変させていくかもしれません。